1134森武著『ピンポン外交の軌跡――東京,北京,そして名古屋――』

書誌情報:ゆいぽおと,94頁,本体価格1,300円,2015年10月27日発行

ピンポン外交の軌跡―東京、北京、そして名古屋

ピンポン外交の軌跡―東京、北京、そして名古屋

  • 作者:森 武
  • 発売日: 2015/10/01
  • メディア: 単行本

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「ピンポン外交」といえば,第31回世界卓球選手権(1971年3月〜4月,名古屋)への中国の参加を機に米中の交流(アメリカ選手の訪中,キッシンジャー毛沢東周恩来との会談,ニクソン訪中,中国選手の訪米など)を経て,米中国交樹立(1979年1月)を指すことが多い。これに絡めて田中角栄首相の訪中(1972年9月,同時に日華平和条約終了)や日中平和友好条約締結(1978年8月)にいたる日中間の関係樹立を指すこともある。
卓球人としてこれら日中の交流に関わった著者(71年当時日本卓球協会常任理事)は,名古屋世界大会以前の約10年間続いた日中交歓大会やかつてあったアジア連盟での中国と台湾との対戦,第41回世界卓球選手権(1991年4月,千葉)での韓国・北朝鮮統一チームとしての参加,イスラエルパレスチナのダブルスなどより広義にピンポン外交を捉えている。
そのうえでアメリカ選手コーエンと中国選手荘則棟との「偶然」の出会いの裏には,米中間の水面下の外交交渉があったこと,あらかじめ中国側にシナリオができていたことを論じている。
「ピンポン外交」という言葉は共同通信発信のニュースが初発(1971年4月9日)で,その後(10日)米紙「ニューヨークタイムズ」に 'Ping-Pong Diplomacy' と載ったことを紹介している。
著者の記憶に辿っての記録ではなく,当時のパスポート,手帳,メモ帳をもとにした事実の叙述は資料的価値を持っている。