007歌田明弘著『本の未来はどうなるか――新しい記憶技術の時代へ――』

書誌情報:中公新書1562,227頁,本体価格780円,2000年11月25日

初出:コンピュータ利用教育協議会『コンピュータ&エデュケー ション』第10号, 柏書房,2001年5月31日

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本号の巻頭インタビューに登場いただいた歌田さんの最新著作である。本にこだわりながら本の本質を抉ることによって本を超えるなにものかを追求した著作といえる。
著者はまずグーテンベルクの印刷技術を振り返る。そこでの視点をハイパーテキストの概念と結びつけ未来の本を展望する。さらに情報空間を視野に入れることによって「知覚と感覚」が融合したメディアを構想する。本の未来とコンピュータやインターネットが切り開いた地平とは,著者によって「新しい記憶装置」としてよみがえる。
グーテンベルクが革命をもたらし,今度はそれがデジタル技術の発展による新しい革命によって乗り越えられようとしている。著者の問題意識は,決して「変貌への賛歌」(あとがき)ではない。むしろ本の本質を「記憶装置」としてとらえることによって,新しい本の仕組みを提起した。ブッシュのハイパーテキスト,さらにそれを具体化しようとしたメメックス,コンピュータとインターネットをめぐるアイデアを未来の本の視点からこれほど読み込んだ著作はさほど多くはない。巻頭インタビューを補足する意味でも一読をすすめたい。