012平田清明先生遺稿集出版を祝う会

平田清明遺稿集の刊行(http://d.hatena.ne.jp/akamac/20071117/1195289323)をうけて,昨日,平田ゼミ同窓会「創造の会」主催の「平田清明先生遺稿集出版を祝う会」(於学士会館)が開かれた。評者も末席を汚してきた。約50名の参加があった。
内田弘(専修大学)は,「市民社会の三段階発展」と題し,フランス『人権宣言』の「自由・平等・所有」から1848年憲法の「自由・平等・博愛」への転化に市民社会原理の再定義と発展を見いだし,それを受けて市民革命を三段階に整理し,平田の「マルクス主義理解そのものの日本的特徴(自己完結性)」を確定しようとするものであった。第一次をブルジョア革命,資本家・地主社会,第二次を「博愛」原理の樹立,直接生産者の市民社会参加,社会権尊重,第三次をジェンダー,社会的弱者,少数民族エコロジーなどの共生社会,それぞれ描き,東アジアの現段階の市民社会を確定しようというしていた。詳細なレジメにもとづき,平田の問題意識を発展させようとするメッセージを込めていた。
伊東光晴京都大学名誉教授)は,遺稿集から浮かびあがる平田理論の特徴についてエピソードを交えて読み解いたものだった。主体的唯物論への接近,内田義彦の経済学史的方法の影響,個体的所有論のゲルマン的土地所有論の限界など,平田の身近にいた伊東の分析は市民社会論形成史そのものといってよい。ケネー研究に見られる循環論的研究視点はかならずしもレギュラシオンに結びつかないとするのは,伊東の解読としておもしろい。あわせて,歴史発展理論と共同体の関係についての19世紀的限界の指摘は,平田理論の継承者に研究の深化をもとめたものだろう。
「創造の会」は平田の代表的著作『経済科学の創造』からつけられたものだ。会に集まった面々にはなんらかの「創造」の意志が感じられたとするのは,ひとり評者のみの印象ではないだろう。