166マルクス・コレクション II

書誌情報:筑摩書房,458頁,本体価格3,600円,2008年3月25日

ドイツ・イデオロギー(抄)/哲学の貧困/コミュニスト宣言 (マルクス・コレクション)

ドイツ・イデオロギー(抄)/哲学の貧困/コミュニスト宣言 (マルクス・コレクション)

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本巻で全7巻が完結した。本巻には,初期の「反哲学」(「解説」より)の書『ドイツ・イデオロギー』(抄訳),「反経済学」の書『哲学の貧困』,「反資本主義」の書『コミュニスト宣言』という若い時代のマルクス(とエンゲルス)の作品が収められている。
凡例では,「『ドイツ・イデオロギー』はマルクスの生前には出版されなかったため,草稿の修正・編集過程,遺稿となった後の保存過程と同定作業,さらにはその後の編纂者たちの編集手法等をめぐって,これまで多くの原典批判上の議論や研究が続けられてきた。以下の抄訳に当たっては,こうしたアプローチは他の研究書や訳書に譲り,むしろ資本制社会の現実を規定する制度や慣習,宗教や観念の歴史的,物質的根拠と由来を問い直そうとする基本的視角や論理構成を取り出すことに重点を置いた」と述べている。それが「解説」(三島憲一)では,「文献学的な問題は,一部のマルクス専門家を興奮させるだけで,現在におけるマルクス理解にとって,文献編纂上の差異が決定的な論点となるとは思えないという認識にもとづい」たとある(422ページ)。
「さまざまな解釈に開かれたかたちで読める」(421ページ)という趣旨には大賛成だ。とりあえずは全7巻完結に祝杯をあげよう。