208高田里惠子著『男の子のための軍隊学習のススメ』

書誌情報:ちくまプリマー新書(089),185頁,本体価格780円,2008年8月10日発行

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一見するとタイトルに偽りありかな。でも,本書を開くとすぐ「軍隊小説を百倍楽しむ法」と出てくるから,偽装にはあたらない。大日本帝国においては本物の学校と学校としての軍隊の2種類あったこと,その昔男女の試練をあらわす「男の兵隊,女のお産」の言葉があったこと,将校の軍服は男性の大胸筋を強調するデザインであったこと,賢くない陸軍と賢い海軍があったこと,不戦と平和のシンボルとなる「わだつみ像」が東京大学ではなく立命館大学になった理由,朝日新聞岩波書店系では「アジア太平洋戦争」と使うこと,などおもしろく読んだ。
軍隊小説は軍隊という過酷な男性社会における寂しさや孤独(「軍服と裸体のあいだにある孤独」164ページ)を扱っているという。本書の直前に出た『学歴・階級・軍隊――高学歴兵士たちの憂鬱な日常――』(https://akamac.hatenablog.com/entry/20080811/1218446260)が戦時下の旧制高校の病いを扱ったとするなら,本書は「年下の男の子」・「多感な思春期の男の子」向けの孤独論をテーマとするということになろう。あえて戦争小説と言わず,その小説を通して孤独を読めとは,さすがに戦争ははるかに遠くなったものだ。