210中原英臣・佐川峻著『新・進化論が変わる――ゲノム時代にダーウィン進化論は生き残るか――』

書誌情報:講談社ブルーバックス(B1594),253頁,本体価格900円,2008年4月20日発行

新・進化論が変わる―ゲノム時代にダーウィン進化論は生き残るか (ブルーバックス)

新・進化論が変わる―ゲノム時代にダーウィン進化論は生き残るか (ブルーバックス)

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前著『進化論が変わる』(1991年1月)以来のウィルス進化説を,ゲノム分析という新しい成果に立って再説したもの。紙数の大部分を進化論の系譜と論点の抽出にあて,ウィルス感染や遺伝子の水平移動,遺伝子組み換えといった自説の展開でまとめている。ダーウィン進化論の解説,今西進化論などさまざまな進化論の位置づけ,進化論の論点整理は客観的に読むことができると思う。
本書で紹介されている木原均の予言「地球の歴史が地質に書かれているように,生物の歴史は遺伝子に記されている」は,京都大学総合博物館http://www.museum.kyoto-u.ac.jp/indexj.html)で見たことがあり,ある論文を書くときの導入にしたことがあった*1
個体にあらわれる突然変異が進化の原動力としたダーウィン進化論に異議をとなえ,独自の進化論を提唱した今西錦司の理論は,解説を読むかぎり,個と種との関係を問うという意味で,ゲーム論的理解と類似性がある。ウィルス進化説はともかく進化にかかわる議論はどこかで人間社会の理解(=社会科学)とどこかで結びつく予感がする。

*1:赤間マルクス経済学」(池尾愛子編『日本の経済学と経済学者――戦後の研究環境と政策形成――』日本経済評論社,1999年1月,isbn:4818810525),Akama, 'Marxian ecnomics', Ikeo Aiko (ed.), Japanese Economics and Economists since 1945, Routledge, 2000, isbn:0415208041.