340神津朝夫著『知っておきたいマルクス「資本論」』

書誌情報:角川ソフィア文庫(N-104-1),221頁,本体価格552円,2009年5月25日発行

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労農派=向坂逸郎の薫陶を受けた著者による文庫書き下ろしである。『資本論』の一字一句の解説ではなく,歴史的諸章に多くを割いて,マルクスの資本主義理解と人間存在へのアプローチを重点としたものだ。
引用を極力避け,あえて編別構成にこだわらない本書の内容は,新社会党系の講座のテキストをもとに再編集・補正したという「党派性」を超えた客観性を担保している。
これまでの入門書では「切り捨てられてきた」という歴史的叙述の重視は,なにも著者のオリジナルではない。歴史的叙述からなにを現代にひきだすか,また,著者が言う資本主義のもとでの人間存在の全体像は,歴史的叙述とどう関係するのか。一読のかぎりでは見えてこなかった。
(追記:2011年2月14日 2010年10月1日にiPhoneアプリになった。→http://itunes.apple.com/jp/app/id394349526?mt=8