457関根千佳著『スローなユビキタスライフ』 (1)・『ユニバーサルデザインのちから――社会人のための UD 入門――』 (2)

(1) 書誌情報:地湧社,189頁,本体価格1,200円,2005年8月31日発行

(2) 書誌情報:生産性出版,ix+284頁,本体価格1,500円,2010年1月20日発行
ユニバーサルデザインのちから ~社会人のためのUD入門~ (NEXTシリーズ)

ユニバーサルデザインのちから ~社会人のためのUD入門~ (NEXTシリーズ)

  • 作者:関根 千佳
  • 発売日: 2010/01/27
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

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段差のない歩道や見やすいサイン,スロープ,ノンステップバス,水道のコック,文房具などなど身近にユニバーサルデザイン(UD)を見ることができるようになった。UD とは「年齢や性別,能力や背景にかかわらず,できるだけ多くの人が使えるよう,最初から考慮して,まちやもの,情報やサービスを作っていくという考え方であり,そのプロセス」((2)iページ)だ。(1) は21世紀のユビキタス情報社会を IT と生活とのかかわりから小説で,(2)は UD がハンディキャップを負う人のためだけでなくかえってビジネスチャンスであるという視点で,それぞれフィクションとノンフィクションで構想したものだ。
日本の教育は障害者を隔離する分離教育を旨としてきて現在も変わっていない。特別支援教育という名の特別な学校があるのだ。国連は「サラマンカ宣言」(1994年)でインクルーシブ教育を進めているのにだ。大学とて就職支援や就学支援のセンターはあっても障害学生支援センターがあるところはそう多くはない(アメリカではこのセンターがないと公民権法違反だそうだ)。大学評価の一項目にバリアフリーの程度と障害学生支援センターの有無,障害学生の比率(朝日のランキングには項目があった)がなくてはならないはずだ。
UD は障害者や高齢者のためのデザインではなく,UD は多様性を認めようとする発想においてすべての人に関係する。ありとあらゆることがらにかかわっている。
アメリカのキンドル利用者は50代,60代が中心だそうだ。文字の拡大縮小や画面の色反転が自由自在だからという。ユビキタス情報社会の UD をあらためて考えさせられた。