書誌情報:講談社,366頁,本体価格1,700円,2009年12月14日発行
- 作者:坂上 遼
- 発売日: 2009/12/15
- メディア: 単行本
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菅生事件(現大分県竹田市菅生)とは,1952年6月2日,警察が共産党を陥れるために,スパイを潜入させ,駐在所爆破を仕向け(このスパイが実行犯であったことが濃厚だが,未確定のまま)た事件である。当初日本共産党員を含む5人が逮捕・起訴され,一審では有罪だったものの,二審で全員無罪となった(爆発物所持,刀剣不法所持などでは数人の被告が有罪)。
諫山博『駐在所爆破犯人は現職警察官だった』(新日本出版社,1978年),野村二郎『[続]日本の検察』(日本評論社,1980年,[isbn:B000J859WM]),斎藤茂男『夢追い人よ』(築地書館,1989年,[isbn:9784806756699]),大野達三『日本の政治警察』(新日本出版社,1972年,[isbn:9784406002080]),同『日本の警察』(同左,1995年,[isbn:9784406023849]),青木理『日本の公安警察』(講談社,2000年,[isbn:9784061494886])などで菅生事件のことは知ってはいた。
警察のスパイだった市木春秋が駐在所爆破を仕向けたあと,雲隠れした市木こと戸高公徳を特定・発見し,出廷を得,被告の無罪を勝ち取るまでのドキュメントは,当時の共産党の路線(=暴力革命論)を利用した典型的なフレームアップを追検証している。元NHK社会部記者の経験をもつ著者の視線は,シナリオ=当時の国警大分県本部警備部長,メガホン=警部,主役=戸高という「陰謀ドラマ」を明らかにしたジャーナリストたちにある。ジャーナリストの本領は発表報道ではなく調査報道にあるという著者の問題意識は存分に発揮されている。二審直後の1958年,日本ジャーナリスト会議の第1回「日本ジャーナリスト会議本賞」を受賞したのが,「菅生事件に関する報道」【(共同通信)山崎稔,原寿雄,高橋実,斎藤茂男,渡辺開作,渡辺祐蔵,吉田達郎,(大分合同新聞)朝来野元生,(大分新聞)福永修,(ラジオ東京)田原茂行,(RKB毎日=当時ラジオ九州)本橋千秋】だった(→http://jcj-daily.sakura.ne.jp/jcjsho04.htm)。学生時代ノンポリだった斎藤茂男がこの事件の報道をきっかけにして「ポリポリ」になったエピソードはよく知られている。
警察組織に翻弄されつつも厚遇された戸高は,その後警察大学校特別捜査幹部研修所教官,四国管区警察局保安課長,警察庁人事課長補佐,警察大学校教授と「出世」した。退職後は警察職員の共済組合「たいよう共済」役員に天下りし,1989年のプリペイカード導入を巡る「パチンコ疑惑」でふたたび注目された。
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