書誌情報:平凡社新書(544),222頁,本体価格760円,2010年9月15日発行
名門大学スキャンダル史 あぶない教授たちの素顔 (平凡社新書)
- 作者:海野 弘
- 発売日: 2010/09/15
- メディア: 新書
- -
ブルデューの「固有名詞を含まない歴史」ではなく,「固有名詞を持った,名も顔もある人間」,「おかしな,あやしい,あぶない,とんでもない教授」,「おかしな,あやしい,とんでもない,あぶない,変な,面白い教授」(「プロローグ」)の生態を描く,というが,それほどスキャンダルではない。著名大学教授から見た大学(史)ともいうべき内容の本だ。
オックスブリッジを対象に大学と大学教授が威信をもつにいたった経緯をとば口に,ニュートン,スウィフト,サミュエル・ジョンソン,ジョン・ヘンリー・ニューマン,ジョン・ラスキン,ウォルター・ペイター,ルイス・キャロル,ケインズ,バートランド・ラッセルなどが各種エピソードで綴られる。
アメリカではハーバードとエールからエリオット,ローエル,ガルブレイス,チョムスキーらが登場する。ニューディール政策時と大量に学者を動員したケネディ政権時の大学人模様が中心になっている。
「大人の幼稚園」(124ページ)である大学の「奇妙な,あやしい,危ない教授たちの巣窟」(「エピローグ」)から見えてくるものは多くない。名門大学にはびこるという秘密結社陰謀説が奇妙に浮かび上がってくるばかりだ。
経済学者としてはスミスが18世紀のオックスフォード批判,王立協会と文学クラブの文脈で,J・S・ミルが1865年のジャマイカ虐殺の審問で,ケインズがニュートン文書とブルームズベリーで,それぞれ触れられている。あぶないわけではない。
- 1年前のエントリー
- 青砥恭著『ドキュメント 高校中退――いま,貧困がうまれる場所――』→https://akamac.hatenablog.com/entry/20091102/1257171696
- 《一言自省録》「子どもにとって安心して学べないことこそ最大の子どもの貧困」が進行する先進国日本の現実を直視したい。
- 青砥恭著『ドキュメント 高校中退――いま,貧困がうまれる場所――』→https://akamac.hatenablog.com/entry/20091102/1257171696
- 2年前のエントリー
- 北京から松山へ→https://akamac.hatenablog.com/entry/20081102/1225633283
- 天安門広場と故宮→https://akamac.hatenablog.com/entry/20081102/1225633284
- 《一言自省録》つぎに中国に行っても煙草外交を試すつもりだ。
- 3年前のエントリー
- 木下卓・清水明編著『ガリヴァー旅行記』→https://akamac.hatenablog.com/entry/20071102/1193995904
- 《一言自省録》社会科学的読解への言及が欲しい。
- 木下卓・清水明編著『ガリヴァー旅行記』→https://akamac.hatenablog.com/entry/20071102/1193995904