30年前この国でオーバードクター(以下OD)問題が社会問題になった。当時のテレビのクイズ問題になったこともある。ODとは「就職の意志をもちながら未就職の状態にあって研究を続けている大学院博士課程出身者」(日本学術会議第10期学術体制委員会オーバードクター問題検討小委員会による定義)である。具体的には,
- 学位または単位をとって大学院を修了または退学したのち,研究生・研修生などの形で研究を続ける者(学術振興会奨励研究員を含む)
- 外国の大学・研究所などの博士研究員(Post Doctoral Fellow)となっている者
- 単位取得後,大学院に規定の年数を超えて在籍(留年)している者
- 大学院退学後,大学・研究所などに籍をおかずに研究を続けている者
である。当時,2と4の実数は不明だが,全体ではおよそ5000名のODが研究者人口の相対的過剰として存在していた。現在のポスドク問題と共通するのは――ドクター過剰養成論をいま脇においておく――,新規採用の急減だった。
30年前のOD問題については,「OD問題の解決をめざす若手研究者団体連絡会」『オーバードクター問題の解決をめざして』(略称:ODパンフ,1980年4月;改訂版1980年6月),同『オーバードクター白書――全国一斉アンケート調査報告――』(1981年11月20日発行),日本科学者会議編『オーバードクター問題――学術体制への警告――』(青木書店,1983年12月1日発行,isbn:425083039X)が詳しい。第1のものは今見つけられずにいるが,第2のものは本棚にあった。第3は市販刊行本だったから古書店では入手できるだろう。
今では入手しにくい包括的な報告書『オーバードクター白書』(総176ページ)についてなんらかの形で公開を考えている。
「OD問題の解決をめざす若手研究者団体連絡会」は,「全国大学院生協議会」(白書刊行時の事務局は東京大学教育学部院教協),「原子核三者若手」,「生化学若い研究者の会」,「生物物理若手」,「天文・天体物理院生の会」,「日本科学者会議若手研究者問題委員会」からなっていた。編集は「OD問題連絡会アンケート委員会」(京都大学院生協議会内)で,編集責任者は「丹生谷貴行」,印刷は「北斗プリント」だった。
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