049「バルチック艦隊と真之」展および図録

坂の上の雲ミュージアム第5回企画展テーマ展示「日露戦争と明治のジャーナリズム2 バルチック艦隊と真之」を観てきた(2011年3月1日〜2012年2月下旬)。
坂の上の雲』第2巻「渡米」,第4巻「旅順総攻撃」・「海濤」,第5巻「印度洋」・「大諜報」・「鎮海湾」,第6巻「ネボカトフ」・「東へ」・「抜錨」・「宮古島」とロシア艦隊乗組員の記録(コンスタンチン・サルキソフ著鈴木康雄訳『もうひとつの日露戦争――新発見・バルチック艦隊提督の手紙から――』朝日新聞出版,2009年【下記関連エントリー参照】,ノヴィコフ・プリボイ著上脇進訳『ツシマ(日本海海戦)遠征』三笠書房,1952年,ポリトゥスキー著長村玄新訳『リバウからツシマへ――バルチック艦隊技術将校ポリトクスキーの日記――』文生書院,2009年,ウラジミール・コスチェンコ著徳力真太郎訳『捕らわれた鷲』原書房,1977年)の文章とをもとに写真など147点で構成していた。
バルチック艦隊成立(1904年4月30日)から航海の過程とロシア国内での「血の日曜日事件」(1905年1月22日)や戦艦ポチョムキンの反乱(1905年6月27日)などによってロシアの「内部崩壊」までを描く。「外国に売るべき資源もなく,ただ水っぽい土壌の上に成る稲の穂をしごいては食っているだけの農業国家」(「鎮海湾」)日本が日本海海戦で大国ロシアを負かすストーリーが際立っている。「要するにロシアはみずからに負けた」という司馬の日露戦争観は展示のなかでのバルチック艦隊の寄せ集めた編成や乗組員の士気,大航海などを通じて主張したということなのだろう。