599鳥飼玖美子著『国際共通語としての英語』

書誌情報:講談社現代新書(2104),194頁,本体価格740円,2011年4月20日発行

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1989年告示の学習指導要領はすでに「英語教育の目的は,コミュニケーション」であることを謳っていた。小学校での英語導入や学校英語では実用にならないという「英語教育への怒りと恨み」が後押ししたと著者は分析している。喩えは的を射ている。「「学校で何年も体育を習ったけど,上手くはならなかったぞ,どうしてくれる」と怒る人はいませんが,英語については「学校で何年も英語を習ったけど,上手くならなかったぞ,どうしてくれる」と憤慨している人が日本には多数いる」。
著者はそうした英語教育の実情をふまえ,何のためにどのような英語であるべきか,異文化理解でもスキルでもなく国際コミュニケーションを可能にするための英語教育(「国際共通語としての英語」)を提唱する。そうしたうえで,脱ネイティブ・スピーカー信仰,学習事項の仕分け,読み書きの重点化,自律した学習者育成の指針を示す。
もうひとつのポイントは英語学習が目指すコミュニケーション能力である。英語力はいうまでもなく,母語の力,言葉への感性,コンテクストを読み取る力,相手への共感を感じる力がものをいうことになるという。
英語は必要ないという人生もあっていい。英語,英語と言うなという意味もわかる。英語を国際共通語として習得しようとしつつ英語学習の負担感を軽減し,英語学習の動機づけをしっかりしようというわけだ。
学校で学ぶ英語プラス自ら学ぶ意欲があればなんとかなるさ。これほど簡単ではないが,読む,書く,聞く,話すという基本をなんども繰り返しているのが印象的だ。