書誌情報:美学出版,397頁,本体価格2,800円,2010年11月20日発行
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早稲田大学演劇博物館グローバルCOEプログラムのシンポジウム「公共劇場の10年」(2008年2月7日)を機会に生まれた舞台芸術・演劇の現状(日本,フランス,ドイツ,シンガポール)と未来について,「公共性」をキーワードにまとめている。実演芸術が限られた空間で演じられるのに,いかに公共性をもちうるのかという問題に答えようとしている。
実演芸術は「ボーモル病」と言われるように,生身の人間が主体であることによって生産性の向上を期待できない。しかし,仲代達也が言うように,「退職金も失業保険もなし。ある意味で万年失業状態の日雇い労働者」(朝日新聞,2009年1月4日,本書159ページから孫引き)であるのが日本の俳優の現状だとすると,好きでやっている人の自己責任とだけとはいいきれない問題がある。商業ベースの活動と自治体や国が関わる公共劇場,文化芸術活動と公共政策など本書を超える課題はなお多いが,新国立劇場,水戸芸術館,世田谷パブリックシアター,静岡県舞台芸術センター,山口情報芸術センター,にしすがも創造舎,島の劇場の7館の舞台芸術・演劇公演,ワークショップ・レクチャーなどの10年だけでも着実に根を張りつつある現状を見てとることができる。
文化政策とアートマネジメント,あるいは,公共性と経済性というふたつの課題をそれぞれ前者(文化政策と公共性)に力点をおいて舞台芸術・演劇の未来を語ろうという方向性ははっきりしているようだ。
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