652チャールズ&レイ・イームズ著(和田英一監訳・山本敦子訳)『コンピュータ・パースペクティブ――計算機創造の軌跡――』

書誌情報:ちくま学芸文庫(イ―43―1),334頁,本体価格1,400円,2011年8月10日発行

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1968年に構想され1971年に実現した IBM のための展示会「コンピュータ・パースペクティブ」を基礎に,コンピュータ(計算機)の起源と発達の軌跡を図入りで説明したエッセイ集である。現代のコンピュータが誕生するまでの1890年から1950年の60年間を,実物・写真・資料(500点以上)で追う。自動化した自己制御調整装置である論理自動機械(論理オートマトン)・情報を分類処理する統計機械・演算を実行する計算機械を実行する現代のコンピュータ創造の歴史が概観できる。
パンチカードを使ったヘルマン・ホレリスの電気機械式データ処理分類装置からノイマンによるプログラム記憶方式にいたるまでまさしく「図説コンピュータ史」(帯の惹句)となっており,展示内容の充実ぶりをうかがわせている。汎用コンピュータの出現までの試行錯誤の過程を再現することで複数の試行が複雑に絡み合いひとつの方向性を見つけ出していく。技術開発の歴史だけでなく,国勢調査ソ連のゴスプラン,生命保険,経費計算,産業連関分析,各種データベースなど社会からの必要性という視点も随所にある。技術と社会との関連を意識しており,たんなる技術史になっていない。
一項目見開き2ページの配列は断片的だが,ともかく60年間のコンピュータ前史を一気におさらいすることができる。コンピュータ開発に情熱をかけた人間たちの挑戦がよく描かれている。