書誌情報:京都大学学術出版会,iv+242頁,本体価格2,000円,2011年6月30日発行
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大学設置基準(1991年)の大綱化以降,教養部の廃止と第2外国語教育の縮小・廃止が進んだ(それまでは法令によって第2外国語教育は必修だった)。一部の学科に第2外国語必修が残ってはいるが,愛媛大学も例外ではない。多言語主義が論じられるようになったのは第2外国語の自由化,つまりは大学においても英語だけの履修で卒業できる制度への危機意識があった。
本書は EU が掲げる多言語主義の経験を学び,英語以外の複数の言語をさまざまなレベルで習得する複言語・複文化主義の可能性を論じる。朝鮮語,アラビア語,フランス語,スペイン語,ドイツ語,ロシア語の言語的特性を浮かび上がらせ,多言語・複言語・複文化による「創造的インターフェイス」を志向しようという。
英語「帝国主義」に抗して英語以外の言語を学ぼう,習得しようというマニフェストではない。なぜ言語を学ぶのかを考え,言語と不即不離にある文化との関係を意識し,自分以外の他者の言語と文化の理解を深化させるためにこそ多言語・複言語が必要だというマニフェストである。
言語は「社会的共通資本」(第II部第4章における宇沢弘文からの援用)であるとの観点からは英語や日本語の「標準語」基準の言語観に再考を迫る。「私たちは多様な言語や文化に触れることにより,自民族・自国語中心主義の呪縛に目覚め,それを相対化するすることが必要」(214ページ)なのだ。
日本の地理的位置からすれば,ロシア語,朝鮮語,中国語をはじめ東南アジアの諸言語への関心が高まっていていい。韓国からの大学院生からは朝鮮語をほんの少し教わった。中国語にも挑戦してみよう。
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