670小林章著『フォントのふしぎ――ブランドのロゴはなぜ高そうに見えるのか?――』

書誌情報:美術出版社,206頁,本体価格2,000円,2011年1月7日発行

フォントのふしぎ  ブランドのロゴはなぜ高そうに見えるのか?

フォントのふしぎ ブランドのロゴはなぜ高そうに見えるのか?

  • 作者:小林 章
  • 発売日: 2011/01/17
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

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欧文フォントは何万種類もあるという。著者がタイプ・ディレクターとして働いているドイツの会社(ライノタイブ社)のフォントカタログはA4サイズで600ページ,厚さ5センチある。ホント,フォントってすごいと思う。
ルイ・ヴィトンンのロゴは Futura フォント――Macに標準搭載――を使い,Oがまん丸で,字と字の間が空いている。ゴディバのロゴは Times Roman から Trajan に変わった。ディオールのロゴは Nicholas Chochin で100年前のデザインフォントという。男性用香水は Cochin。ラルフ・ローレンは ITC Fenice で,とくに工夫はしていない。ルフトハンザはすべて Helvetica でコーポレイトタイプになっている。ダイソンは Horatio をベースにアレンジしているらしい。
ほかにもテディベアの Diotima,フォルクスワーゲン用の VAG Rounded,ブルガリ BVLGARI 表記の V の歴史,合字・ハイフン・ダーシ・ウムラウト・引用符などなどフォントの話がずっしり詰まっている。すべて写真入りなので,見ているだけで楽しい(写真270点とコラム70点)。
以前マックのシステムインストールのとき,一番フロッピーディスクの枚数が多かったのはフォントだった。いまパソコンで表記できる書体は和文・欧文ともよりどりみどりだが,文章を書くだけならフォントの種類は限定される。コンピュータを購入した時に何種類ものフォントが入っている。これらフォントの開発費はライセンス料という形で OS 製造元からフォント開発者に支払われる。アップルでは美しいフォントを選んで OS に搭載することをポリシーにしてきた。Mac OS に入っている最近のベストセラーは,ライノタイプ社制(ヘルマン・ツァップ開発)の Zapfino だそうで,アップルからはライノタイプ社にライセンス料が,ツァップにはライノタイプ社からロイヤリティが支払われている。なるほど。
Keynote でプレゼン資料を作る時,欧文や数字にはかつてのタイプライターのごつごつ感が好きで American Typewriter を使っている(Courier もタイプライター感がある)。著者に言わせたらフォントセンスがないと言われそうだが,「フォントって見た目で選んでいただいて OK っていうこと」・「見た目で選んで OK 」だそうで,一安心だ。
ウィンドウ・ショッピングではこれまで以上にフォントに注目してしまう自分がいそうだ。