書誌情報:新潮社,252頁,本体価格1,500円,2012年1月20日発行
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あえて西暦で記すと,1964年10月10日(土),1967年12月9日(土),1963年4月12日(金),1966年10月29日(土)に起こった(おこなわれた)昭和のある一日を切り取ったドキュメントである。それぞれ東京オリンピック開会式での五輪マーク(オリンピックマーク・スモーク作戦),銀座を走っていた都電の最終運転,日本橋高架工事開始,中野のブロードウェイセンター完成の日である。
それぞれの日に関係した人々や都市風景,文化や歴史を織り交ぜた東京論は,多くの資料や取材をもとに書かれているはずだ。「特別の日」からある種の連想ゲームのように次から次へと話が展開し,「特別の日」に戻ってくる円環は読んでいて楽しい。
「特別になるのに長い時間が必要だったように,特別でなくなったのも,ある日突然そうなったわけではなく,長い時間の経過というものがあったのだろう」(157ページ)。ある一日にタイムスリップし,その日を迎えたヒトとコトを再現しており,郷愁にかられる。「特別の日」は過ぎ去った一日でしかない。「歴史は語られないもので成り立っている」(50ページ)からこそわれわれの生の営みの意味がある。
「2011.3.11」は多くの人にとって「特別の日」になるだろう。この日を境に日本は変わったと言われるかどうかは「語られないもの」を担うわれわれ次第だ。
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