011許昕のグリップ

現時点でITTFランキング第2位の中国式ペンホルダーのレフティー・許昕(Xu Xin)は卓球の魅力を存分に伝えるプレーをする。前陣・中陣からのラリー展開は許の得意とするところだ。以前はオールフォアといってもいいほどフットワークを駆使したプレーだったが,バックを強化することでオールラウンドプレイヤーに進化した。台上のストップもうまい。フォアへの飛びつきは天下一品である。攻められてもラリーに持ち込める懐の深さは水谷やボルを凌ぐかもしれない。
許のグリップは,王皓(Wang Hao)とも馬琳(Ma Lin)ともすこし違う。韓国オープンの準々決勝の対水谷戦でのプレーからのキャプチャーを見てみよう。第1ゲーム10-9とゲームポイントを握ってのサーブのシーンである。

親指は真っ直ぐに,人差し指はラバーを覆うように握っている。サーブの時は裏面の中指と薬指を丸めるが,それ以外は伸ばして打っているようだ。親指の関節と人差し指の第2関節でラケットを押さえる感覚になる。王と馬の親指と人差し指はラケットのブレードあたりで交差する。表面のラバーをラケット全面に貼っていないところは3人とも同じだ。
許の強力なフォアドライブと手首を回転させるバックハンドの秘密はどうやらこのグリップにあるようだ。指が長いということもこのグリップになっている一因だろう。1990年生まれの許はまだ23歳だ。ここしばらく許は馬龍(Ma Long)や張継科(Zhang Jike)とともに世界最強の中国の中心選手として活躍するだろう。
えなり君の顔を引き締めるとこういう顔になるのではという風貌もいい。許と同じ中国式ペンホルダーの評者にとっては当分目が離せない選手である。