826日本経済新聞社編『経済学の巨人 危機と闘う――達人が読み解く先人の知恵――』

書誌情報:日経ビジネス人文庫(に1-44),309頁,本体価格850円,2012年12月3日発行

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日経新聞「経済教室」面に「やさしい経済学 危機・先人に学ぶ」と題した連載(2011年11月〜)などに,加筆・再構成して文庫になった。
いわゆる経済学史(経済思想史)の本になり,連載時は読み,スクラップしていた。市場をどのように位置づけるかに論点を絞り,経済学の展開に即した構成にこだわっていない。貨幣論岩井克人),キンドルバーガー(竹森俊平),ハイエク八代尚宏),ケインズ(柴山桂太),フリードマン(土居丈朗),フランク・ナイト(酒井泰弘),ミンスキー(吉川洋),J・S・ミル(齊藤誠),ハーバート・サイモン(松井彰彦),ジェヴォンズ今井賢一),マーシャル(矢野誠),ブローデル山内昌之),ジョン・ロー(北村行伸),シュンペーター(後藤晃),リカード(若田部昌澄),カール・シュミット(水野和夫),アダム・スミス(西村和雄・堂目卓生)と貨幣論の系譜を辿り総合知で纏めている。土居・岩井・松井の「座談会・転換期の世界に針路」を巻末に収めている。
古典派,マルクス経済学,限界革命オーストリア学派ローザンヌ学派ケンブリッジ学派,ケインジアン,制度学派,シカゴ学派,ニューケインジアンと見取り図(「近代経済学の系譜」7ページ)を示しながらも,網羅しているわけではないことはうえの構成からもわかる。
「市場を礼賛するにせよ,否定するにせよ,そうした賢人たちの深い考察を踏まえずして,単なる雰囲気やムードに流されるだけでは政策論議は深まらない。アカデミズムの知見を利用して自分の問題意識と照らし合わせながらそれを深め,解決のヒントを得ていく。そんなところに経済思想を学ぶ意義がありそうである」(「はじめに」8ページ)。やはりマルクスは必要だ。