1029木暮太一著『アダム・スミス ぼくらはいかに働き,いかに生きるべきか』

書誌情報:日経ビジネス人文庫,i295頁,本体価格800円,2014年9月1日発行

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『いまこそアダム・スミスの話をしよう――目指すべき幸福と道徳と経済学――』(マトマ出版,2011年12月)に加筆編集をして文庫化したものだ。現代の生きづらさを解消すべく,経済学者スミスではなく道徳哲学者兼経済学者スミスに立ち戻って考えようとしていた。
スミスを自由放任主義者や利己主義者と一面的に捉える見方はたしかに存在する。道徳哲学者として出発し『道徳感情論』(『道徳情操論』とも)の大著を,経済学書国富論』に先だって世に問うたスミスを対象にしたのはもちろん著者が初めてではない。堂目本(関連エントリー参照)が大きなきっかけになったのはまちがいない。ビジネスパーソン向けに読者を想定した著者の着眼がいい。
経済発展と国民の幸福,市場・競争と政府の役割というスミスの問題提起は,会社・企業中心で回っている現代社会においては意味がある。著者がスミスから読み取った「賢人」は,会社人間や利益至上主義者とは異なっているからである。