1083『卓球グッズ2015』(月刊卓球王国7月号別冊)

書誌情報:卓球王国,130頁,本体価格667円,2015年6月16日発行

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表紙の「テナジーvsポスト・テナジー」は卓球愛好家以外にはわかりにくいかもしれない。「テナジー」とは日本の卓球メーカーであるバタフライ(タマス)のラバー名である。圧倒的な品質管理と自社製品で国内はもとより国外でも人気があるブランド製品である。その「テナジー」はじめバタフライ製品が2月21日から希望小売ではなくオープン価格になったのだ。これによって希望小売価格6,480円(税込み)が8,000円を超える実勢価格になった。
この背景には海外(とくに中国)での事情があったといわれている。価格改定前は「テナジー」は628元(約12,000円)ほどで売られていた。日本では店頭販売価格が6,000円を切る価格で売られていた。日本で大量の「テナジー」を購入しそれを中国で売りさばくブラックバイヤーが暗躍し,タマスの代理店や現地法人が損害を被るケースが見られるようになった。為替変動にも対応すべくオープン価格によって世界市場での蝶々価格を平準化するもくろみである。これによって国内価格も8,000円を超えることになったのだ。
たった一枚のラバーに8,000円を出せるか。圧倒的なシェアを誇ってきた「テナジー」に代わりうるラバーはあるのか。今年のグッズ集は卓球市場をめぐる駆け引きを背景にしていて,さながら卓球グッズから見た世界経済である。
もちろんグッズ集なので,ラケットとラバーが中心である。評者のような素人卓球人でもトップ選手のプレーを想像しながら見るラケットとラバーはどれも楽しい。プラボールも浸透しつつあるなかでラケットとラバーをどう選ぶか。日本ではペンホルダーがまだまだ元気だ。ペンホルダー編の座談会はそうした事情を捉えた企画で中ペンの評者にも参考になる。現役選手でもグリップは悩んでいるようだ。
右ペン表ソフト速攻型のベテラン選手の「用具はコントロールと打球感が良いものを選び,威力は体で出す。体作りが何よりも大事」というのが正解ではないかと思う。