1184今野浩著『工学部ヒラノ教授と昭和のスーパー・エンジニア――森口繁一という天才――』

書誌情報:青土社,212頁,本体価格1,500円,2015年7月10日発行

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著者の師である「東大工学部三〇年に一人の大秀才」森口繁一を中心に綴ったスーパー・エンジニア物語である。ほかにも「東大工学部「最強頭脳集団」」やら天才が次から次へと登場する。学問分野の特徴を描きつつ教授ポストや後継者を巡る下世話な人間模様が主旋律だ。
ヒラノ教授自身も原子力推進と関わる電力中研に勤め,金融工学の「旗振り役」を自認しながら敢えてエンジニアの自己規定に閉じ込めた感がある。「エンジニアの大半は,専門書と趣味の本以外は読まない」(206ページ)そうだからやむをえない。文化や社会との接点を最初から最後まで排したさすがエンジニアの本である。