1196長内敏之著『「くにたち大学町」の誕生――後藤新平・佐野善作・堤康次郎との関わりから――』

書誌情報:けやき出版,179頁,本体価格1,500円,2013年1月5日発行

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一橋大学を中心にした「くにたち大学町」形成の歴史を追っていた。後藤新平,佐野善作,堤康次郎らの政治家・大学人・実業家の大学町構想を軸にまちづくりと国立駅舎の歴史を扱い,人物とまち・駅を交叉させていた。
国立駅前のローターリー(ちなみに市有地ではなく私有地である)は「部隊の結集と進行,交差のため」であり,「植民地型,あるいは部隊結集・交差型の都市計画」(66ページ)と時代との結節を指摘し,当初の計画案から大学敷地や広い道路などが狭められとことに堤の「利益の確保」(118ページ)を嗅ぎ取っていた。旧国立駅舎は建築家・設計者の意図とは異なり,「アメリカ輸入の簡易プレハブ住宅に,満州の四角い柱をつけて,さらに屋根の下の飾りを付けて重厚なものにした」(136ページ)と新しい事実を発掘した。
佐野善作旧宅跡地にあるのが佐野書院とは初めて知った。また,現在の一橋大学小平キャンパスには元々明治大学キャンパス移転地候補だったことも本書の追跡から知った。
国立市民にして国立愛溢れる著者にしてこその一書だった。それにつけても一橋大学近辺の現在のあの駐輪風景だけは当初の大学町構想でも国立のまちづくりでも想定していなかったようだ。