書誌情報：岩波新書（1857），viii+204頁+13頁，本体価格860円，2020年11月20日発行
- 作者:京洙, 文
- 発売日: 2020/11/24
- メディア: 新書
マスコミで報じられる断片的な韓国情報から文在寅政権の立ち位置を判断することは難しい。また，歴代政権の対日政策が極端にぶれる理由も理解には遠い。
現在進行中の民主主義と経済発展は，2016年〜17年の「ろうそく革命」から文政権誕生には，盧武鉉前大統領の自死とセウォル号事故（事件）があった。本書は，そこに収斂させることによって，分断国家・韓国の四半世紀の歴史を浮き彫りにしており，等身大の韓国を伝えている。
金大中・盧武鉉政権期は，「政治システムと市民社会の協働（コラボレーティブ・ガバナンス）やコミュニケーションの高まり，国家人権委員会など人権レジームの構築，国民基礎生活保障をはじめとするセーフティネットの拡充，さらには過去清算や南北関係の改善など実に多くの達成」（27ページ）があった。李明博・朴槿恵政権期は，長年にわたる韓国の「権威主義的開発体制」（同上）にあった「既得権勢力によるバッククラッシュの時代」（28ページ）だった。
文政権の誕生は，李・朴政権期の「積もり積もった不正義の清算」・「積弊の清算」（109ページ）への期待を込められていた。大法院の「徴用工判決」は「ポストろうそく革命の積弊清算の文脈」（161ページ）からのものであり，「韓国の市民社会が日本社会につきつけた宣告」である。この問題での著者の意見はこうである。韓国は「植民地支配の道義的責任を超えて法的責任」（165ページ）を問うのに対し，日本は「植民地支配をめぐる道義的責任すら認めない地点」まで歴史修正主義に後退してしまっている。
韓国は，盧武鉉前大統領の自死とセウォル号事故（事件）を経て，揺り戻しはあるにせよ，「人権と民主主義，公正と正義（「弔い」の民主主義と読め：引用者注）が市民社会の公準として根を据えつつある」（191〜2ページ）。
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