1611五味文彦著『学校史に見る日本——足利学校・寺子屋・私塾から現代まで——』

書誌情報:みすず書房,193+ix頁,本体価格3,200円,2021年12月1日発行

いわゆる学校は,「家に塾有り,党に庠(しょう)有り,術(すい)に序有り,国に学有り」(『礼記(らいき)』)から来ており,塾・庠・序・学はすでに周代に存在していたそうだ。家は25戸,党は500家,術は12,500家からなる。塾はもっとも小さな単位の学校で,寺子屋は日本独自に手習いを中心にうまれた手習い所である。足利学校は庠,松代藩文武学校は序,藩校は「国に学有り」の学となる。もっとも藩校という語は江戸期からで,昌平黌の黌は校舎の意味となる。
著者によると,日本の学校の歴史のうち上世,中世,近世を扱った石川謙著『日本学校史の研究』(小学館,1960年,[asin:B092MJXFH2];のち日本図書センターから復刊か[未確認])が唯一の通史で,ほかに私塾や寺子屋を対象にした石川松太郎著『藩校と寺子屋』(教育者歴史新書,1978年,[isbn:9784315402148]),梅原徹著『近世私塾の研究』(思文閣出版,1983年,[isbn:9784784207473])をあげることができそうとのこと。
本書は古代から現代までの日本各地の学校史を繙くことによってそこから見えてくる日本史を描こうとしている。歴史の激流に登場する馴染みの学校もあれば有為な人材を多数生んだ学校もある。地方に根付いた私塾や家塾も追っている。
社会変革の担い手を養成したことの意義だけでなく,近代における教育・学校の制度化に果たした役割も見えてきた。