1791北村滋著『外事警察秘録』

書誌情報:文藝春秋,293頁,本体価格1,600円,2023年12月10日発行

外国スパイの監視・取締や国際テロの防遏(ぼうあつ)・検挙等を任務にするのが外事警察であり,警察庁外事情報部が担当する。防諜,国際テロリズム対策,大量破壊兵器関連物資等の不拡散など「我が国の存立及び国益を護るための任務を密かに遂行し続けている」(3ページ)。著者は,在フランス大使館一等書記官,警察庁警備局外事課及び警備企画課の理事官,外事情報部外事課長,外部情報部長,内閣情報官,国家安全保障局長を歴任し,外事警察の中枢を歩んできた。
北朝鮮拉致問題,日本赤軍,オルム真理教「ロシアコネクション」,華為(ファーウェイ)摘発,北朝鮮への不正輸出,プーチンとの駆け引き,福島第一原発処理問題,朝鮮総連と在日本大韓民国民団との統一問題,山口組若頭渡仏問題,中国スパイ李春光,特定秘密保護法案成立と著者が関係した「外事」問題は多岐に渡るとともに「我が国の存立及び国益を護る」重要な問題だらけだ。
大東亜戦争と言って憚らない著者の政治的立場は安倍政権での特定秘密保護法案に「職を賭した」。集団的自衛権容認や日米同盟強化の背景がよくわかる。ロシア,中国,北朝鮮などへの「注視」・「動向分析」は当然のことであり,福島第一原発処理問題では民主党政権を飛び越えてでも前総理と連絡を取り合い,東京消防庁ハイパーレスキューの出動を実現させた。
今年になって摘発された水上バイクなどをロシアに不正輸出したとして外為法違反で逮捕されたロシア人経営者(アストレード社代表取締役)の場合もおそらく外事警察の活動と無関係ではないとにらんでいる。最近の朝鮮大学校北朝鮮修学旅行の情報も外事警察の担当だろう。