1793村上勝彦著『進駐軍向け特殊慰安所RAA』

書誌情報:ちくま新書(1641),298頁,本体価格820円,2022年3月10日発行

1945年8月18日,橋本政実内務省警保局長名で全国の長官(知事)宛で「外国軍駐屯地における慰安施設について」の無電が発信された。「外国軍駐屯地には慰安施設等設備」が必要であるとし,警察署長を中心となって「性的慰安施設」「飲食施設」「娯楽場」を作れというものである。もちろんそこで働く「営業に必要な婦女子」も集めろというわけである。この指示の下,東京銀座の幸楽に事務所を構えたRAA(Recreation and Amusemento Association)が設立された。
本書はこのRAAを中心に,国策で作られた占領軍慰安所の設立から「特別女子従業員」の実態,オフリミットや街娼・パンパンと続く負の連鎖を丹念に追い,国が関与を認めようとしない事実を明らかにしている。
特殊慰安や売春を必要としたのは戦争であり,その勝者と敗者にあり,ドイツ強制収容所でも,東欧やソ連でのドイツ軍でも,フランスでのアメリカ軍でも,ベルリンでのソ連兵でも,旧満州開拓団でも存在した。