1825厳復著坂元ひろ子・高柳信夫監訳『天演論』

書誌情報:岩波文庫(青235-1),387+7頁,本体価格1,100円,2025年3月14日発行

清末の社会思想家・厳復(1854-1921)がハクスリー(Huxley, Thomas Henry)の2論文(1893年および1894年)をもとに,「意味を重んじつつ,自身の解釈にもとづき原文の内容や構成に手を加え,原文に挙げられている具体的事例も適宜中国のものに置き換えた,一種の「翻案」書」(「判例」5ページ)である(1898年)。
厳復のいう「天演」とは進化の原理,生存競争と自然淘汰の過程を意味し,アジアを圧迫する西洋の力の源泉を明らかにしようとしたものでハクスリーの意図した文脈とは異なるものの,清消滅の危機にあった中国人知識人に大きな影響を与えたとされる。『天演論』は胡適すや魯迅にも愛読され,厳復と『天演論』は同義だった。中国古典に通ずる中国語訳による優勝劣敗の提示は学術書を超えてベストセラーになったことも頷ける。
厳復は,科挙に挑戦するも叶わず,アダム・スミスやJ.S.ミルなどの翻訳でも知られ,北京大学の初代学長をつとめたことでも知られる。