1887小林和樹著『兵庫県知事問題 失敗の本質ーー情報不信はなぜ生まれたのかーー』

書誌情報:ちくま新書(1920),264頁,本体価格960円,2026年6月10日発行

著者はNHK記者として兵庫県告発文書問題に直面した。本書はその経験をもとに,告発文書問題を知事(県)の不適切な対応・記者会見による今に続く大混乱の経緯と文書内容や兵庫県知事選挙へのメディアの過剰演出による情報不信について記録したものだ。
知事(県)が「最初に事実を確認することがおろそかなまま,文書の発信源を突き止める方向に向かってしまたこと」(27ページ)を「大きな誤り」(同)とし,最初の記者会見から告発者の懲戒処分にいたる失敗を指摘する。それだけでなく,それを報じるメディも告発文書にあった「おねだり」やパワハラをことさらに強調し過熱したことやSNSで広がった誤情報に対応できなかった失敗も指摘する。
告発者の個人情報が漏れていたことについて報道機関にももたらせていたことを匂わせている。「それを知っていながら口を開かなかった報道機関は,公益通報者保護法違反の疑いも含めて放置していいのか」(195ページ)という問題を含む。取材源を守るのか,違法疑惑のある情報漏洩を指摘すべきだったのか。元記者ならではの指摘だろう。