309関根康正・新谷尚紀編『排除する社会・受容する社会――現代ケガレ論――』

書誌情報:吉川弘文館,viii+252頁,本体価格2,800円,2007年5月20日発行

排除する社会・受容する社会―現代ケガレ論 (歴博フォーラム)

排除する社会・受容する社会―現代ケガレ論 (歴博フォーラム)

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ニンビー(NIMBY: Not In My Back Yard「うちの裏庭,つまり,うちの近くはお断り」)は,世界中に見られる公的施設建設反対などの市民運動の動機である。ほかに,LULU(Locally Unwanted Land Use「地域住民に好ましくない土地利用」),BIYBYTIM(Better In Your Back Yard Than In Mine「うちの裏庭よりお宅の裏庭の方がまし」),BANANA(Buid Absolutely Nothing At all Near Anybody「誰の近くにも何も建てるな」),NIMTOF(Not In My Term of Office「私の任期中は困る」)がある。
ニンビーには,原発炉心溶融),国際空港(騒音),ゴミ焼却炉(大気・土壌汚染)のような生活環境に,ホームレス・シェルター,刑務所,精神病院の場合の社会環境に悪影響があると見込まれることからも生じる。ニンビー意識を社会病理とみなすことも,自発的な地域運動とみなすことも可能だ。また,ニンビーによる「迷惑」施設への反対は保守的でも,進歩的でもありえる。
個人レベルの些細な回避行動(フーコーの「汚名化」や「自己内面化」)がゆくゆくは「風習」となる。個人の行動は社会構造に作られとともに,その構造を作る。
本書は,排除と受容をめぐる文化人類学民俗学にかかわるテーマ(移住とケガレ)を主として扱っているが,社会の変化による排除と受容の可塑性を暗示している。