ノーベル賞・フィールズ賞受賞者の記者会見，有力大学学長による共同声明などによって，行政刷新会議による事業仕分けのうち科学技術・学術関係の大幅縮減や見直しに注目が集まっている。
11月24日付けで「東京大学総長 濱田純一」名で国立大学関係には文書が回り，共同声明「大学の研究力と学術の未来を憂う」（引用者注：東京大学記者発表一覧→http://www.u-tokyo.ac.jp/public/public01_211124_j.html）を公表したこと，国立大学協会としての緊急アピールを行うこと（追記2009.11.27：記者会見→http://www.kokudaikyo.gr.jp/whatsnew/entry_199.html，「大学界との「対話」と大学予算の「充実」を――平成22年度予算編成に関する緊急アピール――」→http://www.janu.jp/active/txt5/yosan091126.pdf），政府・与党に要請すべき事柄を確認し速やかな行動を起こすことなどが記してあった（全文については省略）。
新聞報道をみるかぎり，仕分け全体がわかるのは朝日の記事だ。残念ながら他紙の記事はごく一部を伝えるだけだった。科学技術・学術関係の仕分けはどうだったのかについては下記のようだった。国立大学運営費交付金のうち一般管理費（人件費，施設の修繕・維持）についての見直しは表出していない。
議員歳費や300億円を超える政党助成金にも大ナタを振るうのでなければ評者は納得しない。
【行政刷新会議WGにおける事業仕分けの状況（科学技術・学術関係）】
＜大学関係＞
| 項目名 | 事業名 | WGの結論 | 22年度概算要求額（百万円） |
| 競争的資金（先端研究） | 科学技術振興調整費（革新的技術推進費） | 予算は整理して縮減 制度は一元化も含めシンプル化 | 1,000 |
| - | 科学技術振興調整費（先端融合融合領域イノベーション創出拠点） | 同上 | 7,760 |
| - | 科研費（特別推進研究・特定領域研究・新学術領域研究・基盤研究（S)） | 同上 | 57,115 |
| - | 戦略的創造研究推進事業 | 同上 | 50,549 |
| - | 戦略的イノベーション創出推進（産学イノベーション加速事業の一部） | 同上 | 973 |
| - | 先端的低炭素化技術開発 | 同上 | 3,500 |
| - | 戦略的基礎科学研究強化プログラム | 同上 | 2,000 |
| 競争的資金（若手研究育成） | 科学技術振興調整費（若手研究者養成システム改革） | 予算要求の縮減 | 12,510 |
| - | 科研費（若手研究（S)〜（B)・特別研究員奨励費) | 同上 | 33,090 |
| - | 特別研究員事業 | 同上 | 17,042 |
| 競争的資金（外国人研究者招聘） | 世界トップレベル研究拠点プログラム（WP I) | 同上 | 9,312 |
| - | 外国人特別研究員・外国人研究者招致事業 | 同上 | 4,856 |
| 競争的資金（その他分野特定型） | 原子力システム研究開発事業 | 2割程度縮減 | 5,555 |
| - | 先端計測分析技術・機器開発事業 | 1〜2割縮減 | 5,501 |
| 競争的資金（ライフサイエンス） | 革新的タンパク質・細胞解析研究イニシアティブ（ターゲットタンパク研究プログラム） | 2割〜半額縮減 | 4,600 |
| - | 分子イメージング研究戦略推進プログラム（第�期） | 2割〜3分の1程度縮減 | 700 |
| - | 感染症研究国際ネットワーク推進プログラム（第�期） | 厚労省との連携を考えながら廃止又は2割〜半額縮減 | 2,100 |
| 競争的資金（女性研究者支援） | 科学技術振興調整費（女性研究者支援システム改革） | 3分の1縮減 | 3,050 |
| - | 知的クラスター創成事業・都市エリア産学官連携促進事業・産学官民連携による地域イノベーションクラスター創成事業 | 廃止 | 13,066 |
| - | 産学官連携戦略展開事業 | 同上 | 2,881 |
| - | 地域イノベーション創出総合支援事業 | 同上 | 10,923 |
| 研究環境国際化の手法開発 | 研究環境国際化の手法開発 | 同上 | 261 |
| 合計 | - | - | 248,344 |
＜研究所・機構＞
| 項目名 | 事業名 | WGの結論 | 22年度概算要求額（百万円） |
| 理化学研究所 | 次世代スーパーコンピューティング技術の推進 | 来年度の予算計上の見送りに限りなく近い縮減 | 26,759 |
| - | 大型放射光施設（Spring-8） | 1/3から1/2程度の予算縮減 | 10,821 |
| - | 植物科学研究事業 | 1/3程度の予算縮減 | 1,278 |
| - | バイオリソース事業 | 1/3程度の予算縮減 | 3,170 |
| 海洋研究開発機構 | 深海地球ドリリング計画推進 | 予算要求の1割から2割縮減 | 10,785 |
| - | 地球内部ダイナミクス研究 | 少なくとも来年度の予算の計上は見送り又は予算要求の半額縮減 | 1,295 |
| 科学技術振興機構 | 理科支援員等配置事業 | 廃止 | 2,200 |
| - | 日本科学未来館 | 予算縮減 | 2,299 |
| 宇宙航空研究開発機構 | GXロケット | 予算計上見送り（エンジン開発見直し） | 5,800 |
| - | 宇宙ステーション補給機 | 1割縮減 | 25,981 |
| - | 衛星打ち上げ | 1割縮減 | 8,963 |
| 日本原子力研究開発機構 | 高速増殖炉（FBR）サイクル技術（もんじゅ及び関連研究開発） | 事業の見直し | 43,554 |
| - | 材料試験炉研究開発（JMTR） | 同上 | 4,233 |
| - | 高レベル放射性廃棄物処理技術研究開発 | 結論持ち越し | 8,302 |
| - | 国際熱核融合実験炉研究開発（ITER）（サテライト・トカマク計画） | 同上 | 3,293 |
