文科省の大学・大学院政策の基本は「競争的環境の中で個性輝く大学」(98年の大学審議会答申「21世紀の大学像と今後の改革方策について」の副題)だ。生き残れる大学と潰れる大学があってもいい――大学への競争原理の導入と大学淘汰である。また,中教審中間報告「我が国の高等教育の将来像」(05年)では,世界的研究・教育拠点型をはじめ7種類の機能別分化について述べた。そうした「個性輝く大学」づくりの財政的支援が研究においては「21世紀COEプログラム」(今年度から「グローバルCOE」),教育においては各種教育支援プログラムである(COEについては,「グローバルCOE」https://akamac.hatenablog.com/entry/20070615/1181903271,「グローバルCOEの報道を検証する」https://akamac.hatenablog.com/entry/20070618/1182158876,「グローバルCOE詳報」https://akamac.hatenablog.com/entry/20070619/1182249972,「もひとつグローバルCOE」https://akamac.hatenablog.com/entry/20070704/1183518364参照)。
各種教育支援プログラムは略称GP(Good Practice)と言われ,03年の「特色ある大学教育支援プログラム」を皮切りに,今年度には15種類のプログラムになった(下表参照。名称は略称を使っている。)。花火を打ち上げるようなプログラムにもなりかねないとして,その効果に懐疑的な教員も多い。しかし,たとえば,「採択件数が多い大学ほど,有意義な取り組みが行われ,教育力があるとみることができる。/同時に,応募申請さえしていない大学は,教育に自信がないともいえるのだ。」(『読売ウイークリー』2006.12.3)と,GPは大学(短大,高専も含む)の教育への取り組む姿勢を判断する指標になりつつあるのも事実だ。
種別 | 名称 | 2002 | 2003 | 2004 | 2005 | 2006 | 2007 |
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COE | 21世紀 | ○ | ○ | ○ | - | - | - |
- | グローバル | - | - | - | - | - | ○ |
GP | 特色 | - | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
- | 現代 | - | - | ○ | ○ | ○ | ○ |
- | 専門職 | - | - | ○ | ○ | ○ | ○ |
- | 教員養成 | - | - | - | ○ | ○ | ○ |
- | 医療人 | - | - | - | ○ | ○ | ○ |
- | 国際化 | - | - | - | ○ | ○ | ○ |
- | 大学院 | - | - | - | ○ | ○ | ○ |
- | 社会人 | - | - | - | - | - | ○ |
- | 学生支援 | - | - | - | - | - | ○ |
- | 大学院教育 | - | - | - | - | - | ○ |
- | がん | - | - | - | - | - | ○ |
- | 派遣 | - | - | - | - | ○ | ○ |
- | IT | - | - | - | - | ○ | ○ |
- | ものづくり | - | - | - | - | - | ○ |
- | サービス | - | - | - | - | - | ○ |
今年度について,「地域医療等社会的ニーズに対応した質の高い医療人養成推進プログラム」(表では「医療人」),「現代的教育ニーズ取組支援プログラム」(表では「現代」),「特色ある大学教育支援プログラム」(表では「特色」)の採択結果が公表された。マスコミではごく一部しか報道されておらず,正確な情報が伝わっているとは言い難い。まず,「医療人」について一覧表にしておく。なお,本一覧表は文科省の公表データによる(http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/19/07/07072516.htm)。元号は西暦に直している。
2007年度「地域医療等社会的ニーズに対応した質の高い医療人養成推進プログラム」
大学名 | 取組名 |
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テーマ1「女性医師・看護師の臨床現場定着及び復帰支援」 | |
旭川医科大学 | 育児と介護をささえるオールホスピタル計画――5段階教育プログラム「二輪草プラン」で安心復職―― |
筑波大学 | 女性医師看護師キャリアアップ支援システム |
神戸大学 | D&Nブラッシュアップ教育の組織的展開――女性医師・看護師の職場復帰に向けたネットプログラム・キャッチアッププログラムの開発―― |
島根大学 | 新しいキャリア継続モデル事業――しなやかな女性医療職を目指して―― |
岡山大学 | 女性を生かすキャリア支援計画 |
九州大学 | 女性医療人きらめきプロジェクト――魅力ある職場での生涯現役をめざして―― |
大阪市立大学 | 子育てとキャリアアップの両立をめざして――地域と連携した女性医師・看護師支援システムの構築―― |
和歌山県立医科大学 | 女性医師の出産育児休業からの職場復帰支援――特にFD教育による意識改革とコーチングによる自己実現プログラム―― |
自治医科大学 | 自治医科大学女性医師支援プログラム |
テーマ2「臨床研究・研究支援人材の養成」 | |
群馬大学 | 大学院融合型OJTによる臨床試験人材養成 |
神戸大学 | 先進的CRESPによる臨床研究教育の改革――神戸ローカル医療クラスターにおけるクリニカル・リサーチ・エキスパート特修プログラム(CRESP)の開発―― |
山口大学 | 良質な医師主導臨床試験支援人材の育成――日本人のためのエビデンス構築の基盤整備―― |
琉球大学 | 臨床研究専門医と上級CRC養成プログラム |
東京慈恵会医科大学 | プライマリケア現場の臨床研究者の育成 |
北里大学・慶應義塾大学・順天堂大学 | 臨床研究人材育成教育コンソーシアム――国内・海外連携による教育システムの構築と実施―― |