085海部宣男著宮下曉彦写真『カラー版 すばる望遠鏡の宇宙――ハワイからの挑戦――』

書誌情報:岩波新書1087,viii+196頁,本体価格1,000円,2007年7月20日

カラー版 すばる望遠鏡の宇宙―ハワイからの挑戦 (岩波新書)

カラー版 すばる望遠鏡の宇宙―ハワイからの挑戦 (岩波新書)

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太陽系外惑星の観測装置すばる望遠鏡は,補償光学(空気の乱れによる星像のチラつきを補正する)とコロナグラフ(明るすぎる中心星の光を隠す)という先端技術を組み合わせた観測装置だ。なぜこの装置が必要かといえば,惑星そのものどころか惑星の光を間接的に見ることによってしか惑星の存在を確認できないからだ。ドップラー法を利用して太陽に相当する中心の惑星のわずかな動きから,それを回る惑星の存在を知り,重さや軌道がわかる。この観測法によって現在200を超える太陽系外惑星の存在が確認できるという。宇宙に打ち上げた望遠鏡による同様の方法がトランジット法であり,コローとケプラーの両観測衛星が光度変化を精密に測る。
技術の限界を追求したすばる望遠鏡の建設から宇宙の新発見までをカラー写真と文章で描いた「宇宙写文集」(本書の惹句から)。「科学は社会とのつながりの中で進めるもの」(はじめに)というメッセージが強く発せられている。本書もそうした精神のあらわれである。