書誌情報:新潮社,206頁,本体価格1,500円,2012年6月15日
- 作者:今野 浩
- メディア: 単行本
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前著(関連エントリー参照)では大学工学部の表の顔を,本書では「97%真実,3%脚色」の裏の顔を書いたとの触れ込みである。出張や科研費をふくむ研究費支出など「不正」すれすれの著者の経験談披露と大学(工学部)や研究・教育上の制度設計にかかわるエピソードを率直に綴っていた。
指導院生との共著論文を「搾取」とし「90%の教授は学生を搾取して業績を稼いでいる」(64ページ)ことや単位認定に纏わる成績修正から筑波大学における「ソフトウェア科学の世界的拠点」を目指す学科設立の「事件」にも触れている。
「知らないでやってしまった違法行為」(54ページ)の最たるものは「衣服を着たまま大学の研究室に入ったこと」(同上)。研究室には私物の持ち込みは禁止されていたからである。「本来であればヒラノ教授は,毎朝大学の入口で素っ裸になり,衣類を守衛に預けたうえで,公費で買った菜っ葉福に着替えてから,研究室に入らなくてはならなかったのである」(同上)。本書でいちばんひねりを効かせた部分だ。
前著同様「教官」が頻出するのは長く国立大学に勤務したせいだろう。
アメリカの大学は「50年も前から国民の休日を無視して授業をやっていた」(105ページ)ことの指摘と「せめて非常勤講師が,ワーキング・プアから抜け出せる水準,たとえば90分講義1コマあたり1万円くらいにまで報酬を引き上げてほしい」(111ページ)との意見はヒラノ教授らしかった。
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