860今野浩著『工学部ヒラノ教授と七人の天才』

書誌情報:青土社,206頁,本体価格1,500円,2013年4月1日発行

工学部ヒラノ教授と七人の天才

工学部ヒラノ教授と七人の天才

  • 作者:今野浩
  • 発売日: 2013/03/22
  • メディア: 単行本

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「前代未聞の工学部実録秘話」『工学部ヒラノ教授』(→関連エントリー参照)は天野孟「もう一人の天才」と題した解説を付けて文庫本になった(新潮文庫,2013年7月1日,[isbn:9784101251615])。
平(ひら)教授(自称)ならぬ「もう一人の天才」(天野)が東京工業大学時代に出会った7人のエピソードを綴っている。
「文理両道の大教授」吉田夏彦,「三階級特進のロールズ助手」藤川吉美,「NP完全問題と闘った男」冨田信夫,「ベトナムから来た形状記憶人間」パン・ティアン・タック,「研究の鬼」小島政和,「谷崎潤一郎に次ぐ才能」江藤淳,「突き抜けたエンジニア」白川浩と「大岡山(東工大のキャンパスがある所:引用者注)七人の天才」が登場している。大学を取り巻く状況や東工大の学内事情を織り交ぜ,研究者の生き様を軽妙に描いている。
「一般書は買わない,読まない,タダでもらえば稀に読むことがある」「エンジニア」(7ページ)が多いことや「議論はその場で首尾一貫していれば,前回言ったことと矛盾していても構わない」「文系人の論争テクニック」(55ページ)を知っているだけに妙に納得できたのだった。研究にかかわる高尚さと俗受けする人間くささを同居させた硬軟二刀流の筆遣いがおもしろく読める理由だろう。
「2005年に実施された国立大学の独立法人化」(10ページ)とあるが,2004年の間違い。