書誌情報:岩波書店,vii+182頁,本体価格1,600円,2014年3月14日発行
- 作者:今野 浩
- 発売日: 2014/03/15
- メディア: 単行本
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著者の大学一年時一学期の成績は半分が可と不可で「カフカ全集」だったエピソードは初見だった。可が山ほどあり優が三つしかなかった「可山優三」の評者とはその後の修業が違う。
ヒラノ教授は,第二次世界大戦中の軍事作戦を立案するために開発された数理的手法を民生用に応用したオペレーションズ・リサーチ(OR)の一テーマである線形計画法を専攻し,日本における研究を主導した。著者が紹介しているように,シドニー・ルメット監督の映画『ネットワーク』(1976年,[asin:B001CT6MIC])の一シーン――「ハリウッド映画で,線形計画法という言葉を耳にしたのは,これが最初で最後」(56ページ)とのこと。日本語字幕では割愛されているという――,東野圭吾の直木賞受賞作『容疑者Xの献身』(2008年,文春文庫,[isbn:9784167110123])に出てくる「P=NP 問題」が線形計画法である。
「主婦の問題」,「巡回セールスマン問題」,「資源の効率的配分問題」,「スケジュールの最適化問題」,「精算スケジューリング問題」,「ナップサック問題」などは線形計画法に関連していた。数学的解説はちんぷんかんぷんでも,著者の師・スタンフォード大学ダンツィク教授を中心とした線形計画法の開発と研究史が一通り理解できた。線形計画法をリードするユダヤ人研究者,金融工学との関わり,カーマーカー特許裁判をめぐる著者の奮闘振り,線形計画法のソフト開発事情などもおもしろい。
「エンジニアは,専門に関わる本と趣味の本以外は読まない生き物」(166ページ)らしいが,「線形計画法」の本として多くのエンジニアにも読まれるだろう。
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