750伸井太一著『ニセドイツ3≒ヴェスタルギー的西ドイツ』

書誌情報:社会評論社,224頁,本体価格1,900円,2012年3月19日

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1949年5月23日から1990年10月3日まで存在したドイツ連邦共和国(Bundesrepublik Deutschland:西ドイツ)は,東ドイツを「吸収」し,その名前を現在に引き継いでいる。西ドイツはいまでは地図上からも消滅したことになる。前二著(1・2)が東ドイツの製品文化史を追い,本書ではそれだけでなく左右の政治家をふくむ政治関連の話題にも多く触れ,1・2の共産趣味に対応させた西ドイツの資本趣味をダジャレ満載で描写している。
ドイツのスーパーで売られている「MIKADO」(グリコのポッキー)と「nippon」(ポップ・ライスのチョコレート・コーティング),クマ型グミ「Haribo」,味も素っ気もない盆の「学ショック」(学食),性の解放を目指した「beate uhse」,外国人労働者を「Fremdarbeiter」ではなく「Gastarbeiter」と呼ぶ理由,日本語の「清涼飲料水」はドイツ語の「Erfrischungsgetränke」の直訳であること,トリーアのマルクス生家は中国からの「聖地巡礼者」で溢れかえっていること,韓国にドイツ村がある歴史的経緯などなどカタログ形式の話題はどこから読んでも興味が尽きない。
自転車にエンジンを備えたバイク(「モーペッド」を「モンペと袴でもOK」とはなから紹介していて,「日夜ダジャレをぶつぶつ呟」いている著者の成果が発揮されていた。
本書シリーズを3冊揃えるとドイツの国旗が完成する。「ニセドイツ」を読むと「二世」にも自慢できるドイツ通になれる。