1180ふくもとまさお著『小さな革命・東ドイツ市民の体験――統一のプロセスと戦後の二つの和解――』

書誌情報:言叢社,314+35頁,本体価格1,980円,2015年8月3日発行

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1985年から旧東ドイツライプツィヒでプラント建設の仕事をしていた著者はちょうど東西ドイツ・東西ベルリンの壁の崩壊を経験した。壁崩壊とドイツ統一という大きな革命に,東ドイツ市民がどのように対峙したのかを丹念に拾い上げていた。
東ドイツ時代に環境汚染問題をきっかけに反体制運動に民主化運動に拡大したこと,壁が崩壊すると同時に各地で秘密警察シュタージの建物の占拠に立ち上がったこと(秘密情報文書を閲覧できるようになり「政治の意向に反して東ドイツ市民が勝ち取ったただ一つの大きな成果」(110ページ)につながる),シュタージ本部の占拠をめぐってのみ市民による暴力的行為があったことなど本書によって知った事実がある。
東ドイツ市民の反体制運動や民主化運動が西ドイツの経済力と政治力に圧倒されのみ込まれていく。彼らにとっては壁崩壊とドイツ統一は「小さな革命」だったのだ。