081堀有喜衣編『フリーターに滞留する若者たち』

書誌情報:勁草書房,vii+190頁,本体価格2,000円,2007年1月15日

フリーターに滞留する若者たち

フリーターに滞留する若者たち

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大都市圏のフリーターの実態調査とフリーター対策提言の書物である。教育から職業への移行期だけでなく,終業後の他領域との関連についても言及し,「包括的移行支援」を提示する。フリーターの実態分析にあっては,学歴との関係,正社員への登用の不十分さ,住宅や家族形成とのかかわり,フリーターの常態化にともなう危機意識の希薄化,について触れられている。フリーターからの離脱については,フリーター経験が一般化することにともない,キャリア上の年齢規範の変化について指摘がある。「夢追求型」「モラトリアム型」「やむを得ず型」の類型化による経年変化も興味深い。ソーシャルネットワークの視点からフリーター問題を掘り下げ,若者の生活世界をカバーする支援のあり方の必要性を示唆している。
本書は,労働政策研究・研修機構の研究成果であり,「大都市の若者の就業行動と移行過程――包括的な移行支援にむけて――」に加筆訂正したもの。オリジナルは,同機構のウェブで公開されている(http://www.jil.go.jp/institute/reports/2006/072.htm)。