書誌情報:勁草書房,ix+218+viii頁,本体価格2,200円,2010年2月15日
- 作者:井村 喜代子
- 発売日: 2010/02/24
- メディア: 単行本
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「実体経済から独立した投機的金融活動」の基本的特徴,CDO・CDSなどの仕組みの解明に紙数が割かれている。70年代の金ドル交換停止以降,国家(とくに基軸通貨国特権をもつアメリカ)が金融危機を抑制する力を持ったが,実態経済停滞・大量失業の克服を困難にしてしまっている。筋書きはこうだ。
CDOやCDSなどは複雑で組成内容やリスクの存在を見えにくくしている。著者のリスク問題を解決したというCDOとリスク回避手段というCDSへの分析視点は,これらが「リスクを増幅し新しいリスクを生み出し,リスクを世界中に拡げていく」という「実体経済から独立した投機的金融活動」の理解にいたる。それのみでなく,金融が実体経済を動かし金融危機が実体経済危機を生む歪んだ経済であるという基本的構図を描く。
資本主義の「混沌」――前著『日本経済――混沌のただ中で――』(勁草書房,2005年6月,[isbn:9784326550494])からの著者のキーワード――を投機的金融活動にみ,資本主義の変質をみる著者の将来の見立ては悲観的ですらある。投機的金融活動抑止から実体経済歪みの是正という道筋は可視化されないまま残っている。
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