335フンボルト大学とマルクスの言葉

潮木守一「マルクス名言に「一歩一歩」――大学玄関に新たなメッセージ――」(朝日,2010年6月25日付)を興味深く読んだ。
創立200周年を迎えたドイツ・フンボルト大学玄関にあるマルクスの『フォイエルバッハ論』からの有名な一句――Die Philosophen haben die Welt nur verschieden interpretiert, es kommt aber darauf an, sie zu verändern. Karl Marx(「哲学者たちは世界をいろいろ解釈したにすぎない。だが,大事なことは世界を変革することだ。」)――に,新しく「Vorsicht Stufen (階段に注意:記事文中では「ステップ」)」を付け加えることでそのまま保存しているとのことだ(記事を縮小したのが下の画像)。

マルクスが学んだ当時はベルリン大学だった。第二次世界大戦後の東ドイツ時代にフンボルト大学に名前を変え,金文字のマルクスの言葉が正面玄関に掲げられたのだった。マルクスの言葉をそのまま残し,各段に同じ金文字で「Vorsicht Stufen」とあれば,否が応でもマルクスの言葉を再考させる仕組みだ。イギリスの芸術家の提案という。
「Vorsicht Stufen」は2009年10月に書き込まれた。それ以前の玄関はというと,下のようになっていた(ググった先:http://fromto.cc/hosokawa/diary/2008/20080820-berlin3/)。視界から消し去ることは誰にでもできる。フンボルト大学の見事な諷刺に喝采を送ろう。