247ハーバーマス80歳のことなど

雑誌 Deutschland (日本版,4/2009, 8/9月号合併号)が届いた(→http://www.magazine-deutschland.de/)。今年80歳(1929年6月18日生まれ)をむかえた,ユルゲン・ハーバーマスを「世界的に注目を集める現代ドイツの哲学者」として紹介していた。「シェリング思想を汲み,マルクス哲学で豊かにされ,言語学の手法で鍛え抜かれたハーバーマスのコミュニケーション哲学」と60年代までの特徴をまとめ,近代社会の「理性的討論」の場と市場によるある種の強制力を合わせもつ資本主義の分析に「根深いアンビバレント」を見ている。
ハーバーマスの思想が世界的影響力をもったのは,近代精神の無条件の信奉とロマン主義(和解と相互理解)という「屈折した,懐疑的な眼差し」だという。さらに,彼も彼の論争相手も論拠の変化があり,ドイツ全体を議論に巻き込み,集団的意識において新時代を画したといえるとする。ドイツの倫理面での再生(意味はよくわからない)はハーバーマスに負っている,とまとめている。
「日本マガジン」のコーナーでは,ハーバーマスとも縁が深い三島憲一へのインタビュー(→http://www.magazine-deutschland.de/jp/artikel-en/article/article/der-habermas-freund.html)と「日本におけるハーバーマスの位置」と題する三島のエッセイ(→http://www.magazine-deutschland.de/jp/artikel-en/article/article/zur-rezeption-von-habermas-in-japan.html),本年度のジーボルト賞受賞者小川暁夫(日独対照言語学)のインタビュー(→http://www.magazine-deutschland.de/jp/artikel-en/article/article/deutsch-aus-ferner-naehe.html)がある。
ドイツでは9月27日に連邦議会選挙がある。05年9月実施の前回選挙の投票率は77.7%だったことなどがわかる「ドイツ連邦議会 総選挙近づく」がトップ記事だ。ドイツでも小選挙区比例代表併用制で,キリスト教民主同盟キリスト教社会同盟(CDU/CSU議席222),ドイツ社会民主党SPD,221),自由民主党(FDP,61),同盟90・緑の党(51),左派党(Die Linke,53)の5会派が議席を占めている。今年の選挙への参加は29政党にのぼる。ドイツでは5%条項があり,有効投票総数の5%以上を獲得するか,小選挙区候補者3名以上を当選させた政党だけが連邦議会議席を持つことができる。現在のCDU/CSUSPDとの大連立か,CDU/CSUとFDPとの連立か,SPDを中心とした連立か。日本の総選挙の結果が早いが,ドイツも目が離せない。ちなみに,CSUバイエルン州だけで活動するCDUの姉妹政党である。