067武田知弘著『ナチスの発明』

書誌情報:彩図社,254頁,本体価格1,400円,2006年12月25日

ナチスの発明

ナチスの発明

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本書の帯の下部に小さく「本書はあくまで中立的な見地で書かれた本です。いたずらに軍国主義全体主義を煽るものではありません。」とある。諸発明(コンサート技術,アウトバーン聖火リレー,ミサイルと宇宙開発,ジェット機,テレビ放送,公衆テレビ電話,ラジオ,人工石油,アルミニウム合金,テープレコーダー,合成ゴム,ヘリコプター,電子顕微鏡,コンピュータ,リニア・モーターカー)や制度・政策(大衆車,バカンス・海外旅行,育児支援策,ガン対策,源泉徴収・扶養控除,労働政策,自然農法,教育改革)にわたってナチスによって初めてあるいは本格的に導入されたものを紹介する(第1章と第2章)。後半はナチス台頭の歴史と今に繋がる遺産についての記述がある(第3章と第4章)。

アウトバーンの建設と亀の子文字の廃止がナチスの2大偉業と言われる(写真は現代にも残る亀の子文字。ミュンヘンにて2003年4月29日。JETRO Deutschland: http://www.jetro.de/j/machi/machiApr2003.htm より)。
ナチスの時代をただ真っ黒に塗りつぶしてきた歴史観は,そろそろ修正されなければならないのではないか」(あとがき)と著者は言う。科学・技術の発明・発見の歴史には空白があるとも言う。歴史研究も科学・技術史研究もそれほど節穴があったわけではない。読み物風に仕立てたのは著者の功績といえる。