546山下英一郎著『制服の帝国――ナチスSSの組織と軍装――』

書誌情報:彩流社,788頁,本体価格5,900円,2010年10月7日発行

制服の帝国―ナチスSSの組織と軍装

制服の帝国―ナチスSSの組織と軍装

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著者の「制服の帝国」シリーズ3部作――『SSガイドブック』isbn:9784883172986,『制服の帝国・Allgemeine-SS』isbn:9784775303054,『制服の帝国・Waffen-SS』isbn:9784775303641(いずれも新紀元社刊)――でのナチス親衛隊(SS: Schutzstaffel)の制服の総集編だ。
ナチス・ドイツの場合,「制服には全て機能が付随しており,その制服(及び階級章)を見れば,その着用者が何を業務にしていて,どれほどの権限があるかなどが極めて明瞭に把握できる」(「あとがき」679ページ)というが,実物軍装品とその着用写真を調べあげた追力は圧倒的である(オリジナル写真約500点!)。われわれが見るナチス関係写真の多くは使いまわされたものだ。歴史研究者とミリタリーマニアとを架橋し,いくつかの大著がある軍装を主題としたSSとその時代の解明に連なっている。制帽,被服,装備,徽章,車両マーキングなどの研究,軍装のうち徽章だけを調べ尽くした文献もあるというからミリタリーマニアの奥は深い。
SSは警察とも国防軍とも異なる。しかし,ナチス体制を維持するために体制内敵を排除することでは警察力であり,ナチス体制を外敵から守ることでは軍隊力であった。制服は肉体を着装儀式に取り込み,その肉体を持つ人間に権威を与えた。ナチスのあらゆる行為は軍装という制服を身に着けておこなわれた。旧日本軍もまったく同じだった。
この種の制服フェチは大歓迎だ。本書は制服に表徴される組織,師団・軍団,装備なども詳しい。