243尾川昌法著『人権のはじまり――近代日本の人権思想――』

書誌情報:部落問題研究所,215頁,本体価格1,800円,2008年3月31日発行

人権のはじまり―近代日本の人権思想

人権のはじまり―近代日本の人権思想

  • -

「人権」とは「恣意的に剥奪または制限されない」(『広辞苑』)権利だ。「世界人権宣言」60年ととともに日本の「人権」をあらためて考える手掛かりになるだろう。
「人権」も翻訳後として成立した。津田眞一郎(のち眞道)訳『泰西国法論』(慶應4年・1868年)が初出という。坂本龍馬勝海舟らが登場する「篤姫」の時代とも重なる。
本書は,文明開化,自由民権運動を経て,明治憲法にいたる「人権」と種々の「権利」の受容の歴史を概観したものだ。マグナ・カルタ(1215年)から世界人権宣言(1948年)までの人権概念の成立と発展や,ロック,ルソーなどの人権思想については広く知られているが,日本については盲点になっていて概説書などはほとんどないように思う。
1948年12月10日は「世界人権宣言」が国連総会で採択された日だ。たまたま届いた Deutschland, No.5/2008, 10/11月号には,ドイツ連邦政府人権政策・人道援助担当委員ギュンター・ノーケがドイツ語版「世界人権宣言」 'Allgemeine Erklärung der Menschenrechte' を右手に掲げている写真が出ていた。