583高等教育の漸進的無償化条項の留保を撤回

国際人権規約社会権規約(A規約)中等・高等教育の漸進的無償化条項,日本政府ついに留保を撤回!」を知る(「全国国公私立大学の事件情報」→http://university.main.jp/blog8/archives/2012/09/a.html)。「日本私大教連 Newsletter 」(No.101, 9/12)からのもの。
9月11日の定例閣議において外務省からの案件として提案されていたもので,「経済的,社会的及び文化的権利に関する国際規約第13条2 (b) 及び (c) の規定に係る留保の撤回について」がそれである(「首相官邸」→http://www.kantei.go.jp/jp/kakugi/2012/kakugi-2012091101.html)。
「国際規約第13条2 (b) 及び (c) の規定」とは,「国際人権規約は,世界人権宣言の内容を基礎として,これを条約化したものであり,人権諸条約の中で最も基本的かつ包括的なものです。社会権規約自由権規約は,1966年の第21回国連総会において採択され,1976年に発効しました。日本は1979年に批准しました。なお,社会権規約国際人権A規約自由権規約国際人権B規約と呼ぶこともあります」の「A規約」に含まれている(全文は外務省のページにある→http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kiyaku/2b_001.html)。

十三条
1 この規約の締約国は,教育についてのすべての者の権利を認める。締約国は,教育が人格の完成及び人格の尊厳についての意識の十分な発達を指向し並びに人権及び基本的自由の尊重を強化すべきことに同意する。更に,締約国は,教育が,すべての者に対し,自由な社会に効果的に参加すること,諸国民の間及び人種的,種族的又は宗教的集団の間の理解,寛容及び友好を促進すること並びに平和の維持のための国際連合の活動を助長することを可能にすべきことに同意する。
2 この規約の締約国は,1の権利の完全な実現を達成するため,次のことを認める。
(a) 初等教育は,義務的なものとし,すべての者に対して無償のものとすること。
(b) 種々の形態の中等教育(技術的及び職業的中等教育を含む。)は,すべての適当な方法により,特に,無償教育の漸進的な導入により,一般的に利用可能であり,かつ,すべての者に対して機会が与えられるものとすること。
(c) 高等教育は,すべての適当な方法により,特に,無償教育の漸進的な導入により,能力に応じ,すべての者に対して均等に機会が与えられるものとすること。
(d) 基礎教育は,初等教育を受けなかった者又はその全課程を修了しなかった者のため,できる限り奨励され又は強化されること。
(e) すべての段階にわたる学校制度の発展を積極的に追求し,適当な奨学金制度を設立し及び教育職員の物質的条件を不断に改善すること。
3 この規約の締約国は,父母及び場合により法定保護者が,公の機関によって設置される学校以外の学校であって国によって定められ又は承認される最低限度の教育上の基準に適合するものを児童のために選択する自由並びに自己の信念に従って児童の宗教的及び道徳的教育を確保する自由を有することを尊重することを約束する。
4 この条のいかなる規定も,個人及び団体が教育機関を設置し及び管理する自由を妨げるものと解してはならない。ただし,常に,1に定める原則が遵守されること及び当該教育機関において行なわれる教育が国によって定められる最低限度の基準に適合することを条件とする。

日本は1979年に批准しながら,赤色で強調した「国際規約第13条2 (b) 及び (c) の規定」つまり中等・高等教育の「漸進的無償化条項」と言われる部分については「留保」していた。今回閣議決定(これからのどの内閣であっても拘束される)でこの「留保」を撤回したというある意味歴史的な大ニュースである。うえの「全国国公私立大学の事件情報」から辿っていって,「衆議院文部科学委員会委員の宮本岳志議員事務所」にこうある(→http://www.miyamoto-net.net/column2/new/1347417118.html,その続き→http://www.miyamoto-net.net/column2/diary/1347544265.html)。

(NEW)昨日,ついに国際人権(社会権)規約13条2 (b) (c) 項の留保撤回!
日本政府は昨日(9月11日:引用者注)の閣議で国際人権(社会権)規約13条2 (b) (c) 項,「中等教育および高等教育の漸進的無償化」条項の留保撤回を決定。
昨夜23時30分(NY時間9月11日午前10時30分)国連に通告書を送付し,本日(9月12日:引用者注)午前10時30分,私に最初に報告に来ました。これは歴史的なできごとです。通告書は即受理され,各国に「回状」が出される予定です。
今年2月21日の衆院予算委員会で玄葉外務大臣が私に対して「留保を撤回したらどうかという判断をして,指示をした。そして,この間,宮本委員も何回かこの問題で留保を撤回すべきだというふうに指摘をしていただいておられたということに対しても,敬意を表したい」と答弁してから半年以上,1979年の条約批准から実に33年ぶりの快挙です。
ぜひみなさんにお知らせください。

2009年12月11日の臨時国大協総会で当時の鈴木寛文科省副大臣は留保撤回の発言をしており,今年の2月の衆議院予算委員会ではうえにあるように玄葉外務大臣は留保撤回を表明していた。「歴史的なできごと」・「1979年の条約批准から実に33年ぶりの快挙」はけっして大げさではない。初等教育と同じように高等教育の無償化についてもかねてから大きな世論になっており,遅きに失した感は否めないもののようやく「漸進的無償化条項」の「留保撤回」に前進した。
松田正久愛知教育大学学長が2月の段階で「日本政府の高等教育の「漸進的無償化条項」留保撤回を歓迎!」といち早くその意味を感知していた(→http://www.aichi-edu.ac.jp/intro/message/2012_02.html)。マスコミは2月の玄葉答弁にも今回の閣議決定にも反応感度がいいとはいえない。朝日は「「大学無償化」国連人権規約を協議へ 外務省が留保撤回」と伝えている(→http://www.asahi.com/politics/update/0317/TKY201203170184.html)。