622マクシミリアン・リュベル著(ジョゼフ・オマリー/キース・アルゴージン編訳,角田史幸訳)『マルクスへ帰れ』

書誌情報:こぶし書房,295+xvii頁,本体価格3,200円,2010年4月15日

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リュベル(1905-1996)はマルクスの全テクストの歴史的批判版の編集・刊行を企図したことがある。フランス語版『カール・マルクス著作集』(全4巻,1963-1994)はそれに代わる実践であり,とくに第2巻部分には『資本論』第2巻・第3巻の草稿をエンゲルスとは異なった配列で編集していた。Marx-Chronik, 1968(上記著作集第1巻所収 'Chronologie de Marx' のドイツ語版)とともに買い求めたことがあった。リュベルはある時期(日本の)マルクス研究者の間では必読または必携文献だった。
本書は Rubel on Karl Marx, Five Essays, edited and translated by Joseph O'Malley and Keith Algozin, Cambridge Press, 1981. の抄訳である(吉田静一訳『マルクスにおける経済学の形成』未來社,1977年,[ASIN:B000J8Y1QM],所収論文を除いて訳出)。リュベルの存在と壮大な意図は,折からの新MEGA編集の時期と重なり,一部は反・新MEGAと誤解され,一部は新MEGAの編集に飲み込まれてしまった。
マルクス主義は,マルクス本人の思考方法によるマルクス自身のオリジナルな産物ではなく,フリードリヒ・エンゲルスの心の中に抱かれ,生み出されたもの」(第1論文,38ページ)とする見方は今では常識になった。
マルクスの原像を復原しようとしたリュベルの仕事については非欧米語圏の日本で高く評価されてきた。吉田静一訳に続いてようやく本書が加わったことを嬉しく思う。