(上)書誌情報:白水社,441頁,本体価格2,800円,2010年7月30日
(下)書誌情報:白水社,369+156頁,本体価格3,000円,2010年7月30日
- 作者:フィリップ ショート
- 発売日: 2010/07/17
- メディア: 単行本
- 作者:フィリップ ショート
- 発売日: 2010/07/17
- メディア: 単行本
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「2010年現在,日本語で毛沢東の全生涯をカバーするまともな伝記は,実は新刊では1冊もない」(「訳者あとがき」下351ページ)そうだから,原著が1999年だったことを差し引いても,誕生から死までを網羅している本訳書は一読する価値がある。実際かなりの長編ながら毛沢東の実像に迫ろうとした著者の息吹を感じながら一気に読むことができた。
毛沢東の思想表明や活動とは裏腹にライバルを蹴落とすための策略も慎重に考え抜かれたかに見える対応に見え隠れする弥縫策も克明に描かれている。生身の人間毛沢東の伝記を通じてあぶり出された中国共産党史としても読むことができる。蒋介石やコミンテルン・ソ連との駆け引き,新中国発足後の政治路線と共産党内の権力闘争,人民公社・大躍進などの失敗も詳しい。
長沙時代にアダム・スミスやJ. S. ミルを読んだこと,1912年に「社会主義」という用語に出会ったこと,1918年にはマルクスの著作もレーニンの著作も中国語訳はなかったこと(『共産党宣言』初の完訳が1920年4月だったこと)など当時の思想・文化状況もしっかり書き込んである。
初期革命運動のなかで「粛清」の効果を知り,「皇帝式指導体制」(下119ページ)を整え,権力闘争の全盛期を再現する文革。中国のこれからを考えるとき,神格化され偶像化された毛沢東と中国共産党一党独裁からの訣別は不可避となろう。Shortのロング・ストーリーはそんなことを考えさせる。
(上巻を左に,下巻を右に並べると毛沢東の顔が再現される。上下巻買えというメッセージのようだ。)
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