269小島朋之著『和諧をめざす中国』

書誌情報:芦書房,226頁,本体価格2,900円,2008年8月8日発行

和諧をめざす中国 (China Analysis)

和諧をめざす中国 (China Analysis)

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著者は2008年3月4日,64歳で亡くなった。本書は著者の遺著である。
著者は生前日本語の単著23冊,編著・共編著25冊,研究論文358本,記事・小論300本以上の作品を残した。これだけの天文学的数字の業績を残すことのできたひとつの理由は,1983年3月から24年間毎月欠かさず連載した中国情勢の現状分析であり,月刊誌『東亜』(霞山会)がその場であった。1年で12本,24年間で288本となる。単著23冊のうち9冊(「チャイナ・アナライシス」のシリーズ)はこの連載をもとにしたもの。本書は2005年から2007年初めにかけての連載である。
著者は本書の論稿を現代中国の時論として書いた。それがそのまま貴重な史料となった。
「和諧」とは六中全会(第16期中国共産党第6回中央委員会全体会議,2006年10月8日〜11日)で正式に決定された「社会主義和諧社会の構築への若干の重大問題にかんする党中央の決定」による。これに先だって数年前からこれからの中国を「和諧(調和のとれた)社会」構築をめざすことが提起されていた。「和諧社会」からはほど遠い中国の現実があればこそ決定された目標といえるだろう。
著者の24年間の執念は,評者にとっても大きな励みになるものであった。